重金属吸着分離材料の開発 of 株式会社 環境浄化研究所

重金属・希少金属 吸着繊維.png

重金属吸着分離材料の開発

日本の重金属に関わる公害問題は足尾銅山や水俣、阿賀野川など各地域で深刻な問題を引き起こしました。それを受け1993年の環境基本法で水質基準が大幅に改定、カドミウム、鉛、ヒ素などの基準値が定められ、フッ素、ニッケル、アンチモンなどの要監視項目の指針値も示されました。これらの重金属は極微量でも環境汚染の原因になるため、工業廃液や鉱山排水中から効率的に除去できる新技術の開発が望まれていました。放射線グラフト重合法は、既存の形状の素材にその物理的特性を損なうことなく、様々な性質を付加することが出来ます。その技術を応用し、有害重金属の吸着除去材料を開発研究しています。すでに重金属選択分離材料の工業生産設備が稼動し、グラフト重合技術を活用した環境浄化事業に貢献しております。

【イオン交換樹脂の応用】
放射線グラフト重合で得られたイオン交換樹脂と従来型のイオン交換樹脂による加水分解速度を比較すると、メチルアセテートは同程度であるが、しょ糖からぶどう糖と果糖を生成する速度はグラフト型が10倍以上大きい結果が得られました。
これは、図1で示すように従来の架橋型スチレン樹脂と比較して、グラフト重合側鎖に導入されたイオン交換機の分子運動性が大きいため、しょ糖のような大きな分子の反応に対して、構造的特徴が発揮された事例であります。

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【鉛吸着除去膜の開発】
日本では年間および1日の気温差が大きいため、配管の亀裂防止を目的に鉛管や鉛パッキンが広く使用されています。そのため、都市上水(飲料水)中の鉛イオン濃度が100ppbを超えるケースがあります。日本では1993年12月に水質基準が100ppbから50ppbに強化されましたが、近い将来にはWHO(世界保健機関)の飲料水水質ガイドライン(10ppb)への準拠が検討されています。このため、高性能の鉛除去材料の開発が急務となっていました。
それを受けて放射線グラフト重合法の応用により、既存の多孔性中空糸膜にイミノジ酢酸基を導入する技術が確立されました。イミノジ酢酸基を導入した中空糸膜に重金属混合液を透過した結果、流出液中のイオン濃度は表1に示す通り、ほとんど検出限界以下でした。これにより、WHOの飲料水水質ガイドライン(10ppb)の達成が可能となりました。
この膜は鉛以外の有害重金属にも有効であり、飲料水だけでなく各種の工業廃液や鉱山排水処理など、環境浄化用フィルタとしての応用が期待されています。

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【廃液中のアンチモンとゲルマニウムの除去】
アンチモンは、家電製品や自動車用プラスチック、壁紙やカーテンなどの難燃加工剤として広く用いられていますが、有害成分として水質環境基準の要監視項目の一つです。
・アンチモン・・・ 家電製品や自動車用プラスチック。
        壁紙やカーテンなどの難燃加工剤。
        衣料品用ポリエステル製造工程中での重合触媒。
・酸化ゲルマニウム・・・ 透明性や成型加工性に優れたペットボトル製造工程中での重合触媒。
廃液中のアンチモンとゲルマニウムは環境汚染物質ですが、分離除去が困難なため、効率的な吸着分離材料の開発が待たれていました。
放射線グラフト重合技術を応用し、既存の多孔膜に一次反応、二次反応を行います。得られた機能性多孔膜へのアンチモン溶液の投入曲線を図2に示しました。透過流速を10倍変化させても吸着性能が変わらないことから、効率的に吸着されていると確認できます。吸着されたアンチモンは塩酸で溶出し、容易に分離回収することができました。
機能性多孔膜は、アンチモンとゲルマニウムを共に効率的に吸着する事も確認されました。

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放射線グラフト重合法の応用では、工業排水中のカドミウムや鉛、ヒ素などの有害重金属の分離や、海水からのウランやチタン、バナジウム、コバルトなどの有用希小金属の回収、
タンパク分離精製のほか、サルモネラ菌やブドウ状球菌に有効な抗菌性フィルタなどの開発を進めています。
放射線グラフト重合法はすでに工業化が進められており、これらの技術の適応により医薬品や食品、精密電子工業などへの応用も期待されています。

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